2019年6月の活動報告


 

「伊勢  吃音のつどい」報告

【主催】 三重言友会、NPO法人 全国言友会連絡協議会

【日時】 201961日(土)10301630

【場所】 いせ市民活動センター 2階 多目的ホール(三重県伊勢市岩渕1229

【参加者】 67名(うち言友会会員12名)

三重言友会では北勢地区の四日市市を中心に例会開催や活動を行っていますが、南勢地区へも活動拠点を広げるべく、全言連の協力も得て、今回初めて伊勢市で「吃音のつどい」を開催いたしました。会場は伊勢神宮外宮の目の前にあり、天気も快晴。伊勢の神様たちに見守られながらのつどいとなりました。開催前には朝日新聞、中日新聞に告知が掲載され、当日は伊勢市の鈴木健一市長にもご挨拶に駆けつけていただきました。会員の皆さんの広報の協力もあり、参加者67名(うち言友会会員12名)と多くの方に参加していただきました。遠くは兵庫、京都、大阪、静岡からも来ていただき、吃音当事者だけでなく、保護者や言語聴覚士、学校教員、保育士など、多くの支援者の参加もありました。

 

午前は会員でもある言語聴覚士の横井秀明先生による講演会「吃音のある子どもの理解と対応方法」、午後からは三重言友会の紹介、会員による体験発表、そして岐阜大学教授の村瀬忍先生による講演会「吃音のある人のQOL ~吃音のある人がよりよく生きるためのヒント~」、最後に公開吃音相談会を行いました。アンケート結果でも「大変良かった」が一番多く、参加者の方々にも満足していただき、有意義な会になったと思います。

 

今後も「悩んでいる吃音のある人を1人にしない!」という事を目標に、三重県全域を視野に入れて活動していきたいと思っています。伊勢市での定例会を希望する声もありますので、検討していきたいです。なお、会員の体験発表をもう一度聴きたい(読みたい)という要望があった為、HPの「会員体験談集」に原稿を掲載しています。よろしければ、どうぞご一読ください。

 

 

 


 

・プログラム

 

10:30-12:00 講演「吃音のある子どもの理解と対応方法」 講師:言語聴覚士 横井秀明(なるみ吃音相談室)

 

《講師略歴》関西学院大学大学院法学研究科博士前期課程修了。政府系金融機関勤務後、日本福祉大学中央福祉専門学校言語聴覚士科卒業。鵜飼リハビリテーション病院を経て、現職。

 

 

13:30-14:10 三重言友会の紹介・体験発表

 

 吃音のある人の自助団体である「三重言友会」について濱田会長が紹介。

 

 会員3名による体験発表。

 

 

伊勢市長挨拶 鈴木健一市長

 

 

14:10-15:20 講演「吃音のある人のQOL 吃音のある人がよりよく生きるためのヒント」 講師:村瀬 忍(岐阜大学教授)

 

《講師略歴》米国シラキュース大学言語病理学科修了。筑波大学大学院心身障害学研究科修了。岐阜大学大学院医学系研究科医科学専攻修了。平成23年より岐阜大学教育学部教授。博士(医学)。

 

 

15:30-16:30 吃音相談会

 

事前に受け付けた質問に対して、講師(横井先生、村瀬先生)と吃音の当事者(三重言友会会員)が回答。

 


 

◆講演 『吃音のある子どもの理解と対応方法』

 

言語聴覚士 横井 秀明(なるみ吃音相談室)

 

 今回、「吃音のある子どもの理解と対応方法」と題して、約1時間半の講演をさせて頂きました。

吃音は「吃ること」とされていますが、実際には「吃ること」を気にするあまり、独特の行動や考え方に陥ることで、結果としてコミュニケーション行動に失敗したり、消極的になってしまうことが問題の本質だとされています。また、言語症状(吃ること)や、二次的症状(吃ることをごまかそうとしたり、隠すためにそもそも話すことを避けたりすること等)が、徐々に変化していくことを「進展」と呼び、評価の基盤となることを概説しました。

僕自身は、小児(子ども)であっても、積極的に言語訓練を導入することで、言語症状、ひいては二次的症状の軽減を図っていくことを目指す立場です。しかし、特に幼児の場合、言語訓練の意欲が十分ではなかったり、指示理解が難しかったりする場合があるのも事実でしょう。そのため、子ども自身に変わってもらうのではなく、周囲の大人の対応を変えていく環境調整が選択肢に浮上することが少なくありません。その環境調整の手法のひとつが、DCMです。DCMは、言語に関する「要求」(「こんな風に」、或いは「こんなこと」を話してほしいという周囲や本人の期待)と、「許容性」(期待に応える実際の能力)のズレである「不均衡」が大きければ大きいほど、言語症状が悪化するという考え方に立ち、特に運動的要求(発話速度など)と言語的要求(発話の長さや内容の複雑さなど)を低減させることで、言語症状の軽減や治癒を図る指導方法です。

一方で、小学校高学年や中学生以降になると、吃音に対する否定的価値観(劣等感や羞恥心)が顕在化し、徐々に工夫が増え、回避に至る段階に達している場合が多く見られます。そのため、流暢性形成法(吃りにくい話し方である、流暢性スキルを身に付ける)による言語訓練と、吃音に対する感情・態度面にアプローチする認知行動療法の併用が、最近では特に注目されるようなりました。後者の認知行動療法は、「出来事」と、それによって起こる「感情・行動・身体反応」の間に、「出来事」をどのように「認知」したかという段階があることに注目し、個々の「認知」のスタイル(自動思考)の変容を図ることで、吃音による不快な感情を軽減させ、不適応な行動の惹起(じゃっき)を阻止することを目指します。例えば、「面接に落ちた」という「出来事」を、「吃ったから落ちた」とだけ「認知」すれば、「悲しい・悔しい」などの不快な感情や、「もう就職できないから、諦めよう」という思考に基づく不適応な行動が生じる可能性があります。しかし、「自分には合わない企業だった」とか、「準備が足りなかった」などの「認知」が加われば、「落ちたのは残念だけど、次こそ受かるように企業研究や自己分析を頑張ろう」というように、不快な感情が(ゼロではないにせよ)軽減され、何よりも適応的な行動が生み出されるかも知れません。無理やりポジティヴに考えるのではなく、「出来事」を客観的、多面的に見られるようになる思考様式を身に付けることが、認知行動療法の核心であると思います。

いずれにせよ、吃音に対処するための方法は、本当に様々です。各自、ご自身に合った方法を選択すべきでしょう。ただ、私たち当事者が蓄積してきた「経験的知識」は、言語聴覚士のような専門家が持つ「専門的知識」と肩を並べる価値があることを、敢えてここで強調したいと思います。「経験的知識」に基づいた自助活動には、「専門的知識」を背景とした治療に、負けずとも劣らぬパワーがあるはずです。どのような道を通るにせよ、最終的に山頂に至ることができれば何の問題もありません。当事者として、専門家として、或いは両者を取り持つ存在として、様々な登頂ルートを案内できる役割を、今後も果たしていきたいと考えています。

 


 

◆講演 『吃音のある人のQOL~吃音のある人がよりよく生きるためのヒント』

 

村瀬 忍(岐阜大学教授)

「吃音のある人本人の中に変わる力がある。決して言語聴覚士さんや先生や周りの人たちがこう変わりなさい、と言って変われるものではなくて、本人の中に必ず変わる力がある。」村瀬先生は冒頭でこのように力強く述べられ、講演が始まりました。以下、簡単ですが、概要を記します。

QOLとは、生活の質(Quality of Life)。本人がどのように感じているか、どの程度満足して生活しているか、が大事。

★吃音はQOLに影響するのか?セルフヘルプグループに所属する成人吃音者188名(男性152名、女性36名)の調査を行った。その結果、吃音が影響していると思われる項目があり、日本国民標準値と比較して低い数値であった。この結果はオーストラリアでも同じである。「身体健康度」に関しては標準値を上回っているものの、「精神的健康度」「役割/社会的健康度」の項目については低い数値が出ていて、特に大きく低く出ているのは「役割/社会的健康度」。「周りに迷惑をかけていないか?自分は役立っているか?生きている価値があるか?」ということ。吃音のある人が自分の人生辛いなぁと思ってしまう理由はここにある。吃音はQOLに影響すると言える。

★満足して生活するために「役割/社会的健康度」を高める必要がある。役に立っている自分、というものを感じなくてはいけない。

★コーピング行動→ストレスに対して人はどんな行動をするのか?その行動のタイプと精神的健康度には関連がある。吃音のある人の中で、QOLの高い人低い人でコーピング行動に違いがあるのか?コーピング行動を3種類に分けて測定する。結果、QOLとコーピング行動にも関連があり、QOLが低い人は「こんな状況に陥ったのは自分のせいだと責める」「うまく対処できないのではないかと不安に思う」という項目において高い数値だった。

★吃音の開示とQOLにも関連があり、322名の成人吃音者の調査の結果(Boyle2018)、QOLが高いほど、開示度も高いという結果であった。

 

【まとめ】

QOLの高い吃音者は、QOLの低い吃音者と比較して、コーピング行動のタイプや吃音の開示度に違いがある。

QOLの高い吃音者は、情緒優先尺度(こんな状況に陥ったのは自分のせいだと責めるなど)の利用が少ない。

QOLの高い吃音者は、吃音の開示度が高い。

・自助グループの活動として、吃音をオープンにする、吃音の自己への考えについて話し合うなどは、QOL向上の効果が期待できる。

※村瀬先生のお話の後、植松電機社長の植松努氏の講演動画を視聴しました。

 


◆吃音相談会

 

回答者:村瀬先生、横井先生、三重言友会会員  進行役:T

 

事前に受け付けた質問(相談)と、当日会場で記入していただいた質問について、1つずつ読み上げ、回答者が答えていきました。いろんな立場での回答が出たので、参考になったのではないかと思います。回答の中の一部をここに記したいと思います。

 

Q:小学校のころ、メンタルクリニックで、精神安定剤を1年続けて飲んだが、何もかわりませんでした。飲んでいる人いますか。効果はありますか?

 

A:吃音を気にするあまり、「精神安定剤」を飲み、吃音軽減を試みた会員もいます。しかし、吃音軽減ではなく、吃音者特有の予期不安を少しばかり軽減する働きがあるようには思います。効果と言われると難しいです。

 

 

Q:どんな職業ならやっていけそうですか。

 

A:吃音をもっていてもどんな職業でもやれると思います。「話す」職業である教員について、吃音だから難しいと考えて諦めた人もいますが、反対に「話す」職業だから、やってみよう挑戦してみようと教員になった人もいます。アナウンサーや落語家、弁護士にもいます。教員という職業を考えてみると生徒を指導できる学力や体力はもちろんのこと、生徒の家庭環境に目を配ることのできる社会性や、生徒一人ひとりに親身にかかわることのできる人間性など、様々なことが求められます。吃音であることによって得た経験を強みにして、仕事に活かしていけると思います。

 

 

Q:娘に吃音があります。本人も自覚していますが、学校の「ことばの教室」へは行きたくないと言っています。本人が行きたいと言うまで待った方がいいのでしょうか。

 

A:言われるように、娘さんが行きたいというまで待ったほうがよいと思います。

 

 

Q:言友会は高校生でも入会できますか?

 

A:言友会には中学生も入っています。回答者自身、言友会に入ったのは高校生の時です。吃音を持ちながらでも社会で生きている姿を見て、勇気づけられたし、生き方が変わりました。入会は早めれば早い方がいいと思います。

 

 

Q:当事者です。子どもの頃、吃音を克服しようとすればするほど症状がひどくなりました。高校時代くらいから、克服を諦め、どもって良いと思うようになると気持ちが楽になりました。現在社会人ですが、克服しようとする気持ちは大切でしょうか?(方法はどうであれ)

A:どもっても良いという気持ちは大切だと思います。克服しようという気持ちよりも人生を前向きに生きる気持ちが大切なように思います。

 

 

Q:具体的に、こんな方法で吃音が改善してきましたという方法があれば1つでも教えてください。

 

A:カミングアウトも一つの方法であるように思います。最初の第1音をささやくように軽くしゃべるのも方法です。人前で話すときは、ペーパーを見ないで、頭の中でくみたてて話すこともいいです。話すことに気を奪われないようにするためです。

 

 

 


例会

 

日時:6月23日(日)13:30~17:00

 

場所:四日市市総合会館 3階 社会適応訓練室

 

参加者: 計8名

 

 

 

第一部13301430 『実践吃音改善』 担当:T

 

初参加の方もみえたので、最初に順番に自己紹介をしました。その時に皆さんが語ってくれた言友会に参加して変化していること、朗読ができるようになってきたことや人前で話すことに対する意識の変化など、それぞれがプラス面に変化している事を聞くことができてとても感動しました。毎月一回の例会ですが、開催することにとても意味があるんだと思いました。皆さんのご参加&ご協力あっての例会です。いつもありがとうございます。

 

吃音改善訓練は、近藤雄生著『吃音―伝えられないもどかしさ』の文章をメトロノームのリズムに合わせて、一文ずつ順番に読みました。リズムに合わせると不安なく安心して発話できるということを体感してもらえたかな、と思います。吃音があるために、予期不安などで安心して言葉を発することができない場面も多いと思いますが、訓練を通じて、本来言葉を話すのはとても楽しい事なんだと認識してもらえたらと思います。  

 

 

第二部14:3017:00 『吃音ドキュメンタリー映画 「The Way We Talk」 鑑賞』   担当:S

 

アメリカの吃音ドキュメンタリー映画「The Way We Talk」を鑑賞しました。

 

吃音がある青年が自身の吃音と向き合うため、家族、研究者、同じ吃音がある方たちとの関わりを通して、吃音との向き合い方を改めて参加者で考えました。

映画鑑賞後、感想を話し合いました。